局所進行膵癌に対する化学放射線治療の効果判定-組織学的効果判定と膵癌間質内Tenascin-C発現について

摘要

要約：膵癌に対する術前治療の組織学的効果判定には，Evans分類やCAP分類が広く用いら れてきたが，2016年の膵癌取扱い規約第7版においては，これらを基盤にしつつ，これらの分 類では曖昧にされてきた部分（治療により癌が完全に消失した間質領域，膵管内病変の扱い） を明確にしたものが作成された。膵癌の組織学的効果と予後との関係については一定の見解が 得られていないが，この原因としては，組織学的効果判定基準の相違が大きく影響していると 考えられる。当科で化学放射線治療後に切除された157例をEvans分類に基づいて，50%以上 の腫瘍壊死効果を認めたhigh responderと50%未満のlow responderに分類し，MSTを比 較するとhigh 59例が33.9力月，low 98例では23.9力月とhighで有意に予後良好であった。 局所進行切除不能膵癌（UR-LA) 110例中，切除された46例で癌間質内Tenascin-C (TN-C)発現で比較すると，MSTはTN-C陰性22例で29.3力月と，陽性23例の17.1力月より有意 に予後良好であつたが，組織学的効果ではhigh (12例）で31.0力月，low (34例）で21.3力月 と，highでMSTがやや延長するものの有意差はなかった（P=0.113)。これらより，術前治 療後の癌間質内TN-C発現は残存腫瘍のviabilityや生物学的悪性度を反映しており，有用な 予後予測因子となりうるものと考えられた。