胆道癌に対する分子標的治療の臨床試験の現状と展望

摘要

胆道癌に対する分子標的治療薬の臨床試験では，治療選択に関わるバイオマーカーが明らかでないために全胆道癌患者を対象としたものが多い。しかしながら，こうした試験で分子標的薬剤の有効性を見逃さないためには，登録された患者全体の治療成績の評価にとどまることなく，治療開始前に効果の期待できる患者集団の選択に有用なバイオマーカーの探索や，治療開始後に早期に治療効果を予測するバイオマーカーの探索を積極的に行うべきである。また分子標的治療薬により「著効」症例が認められた場合，将来の個別化医療に結びつく可能性を念頭におき，それらの症例において癌細胞の増殖の抑制や生存の維持に強く関わる特定の癌遺伝子を詳細に探索すべきである。従来の「臓器別横断的」では治療開発が困難であった胆道癌にとつて，「バイオマーカー別縦断的」なアプローチが突破口となることが期待される。