MYSTフアミリ一に属するヒス卜ンァセチル化酵素の構造と機能

摘要

ヒス卜ンの化学修飾を介した遺伝子発現の制御は個体発生や細胞分化に重要な役割を果たす。中でも，ヒストンのリジン残基のァセチル化は古くから知られる化学修飾であり，精力的に解析が行われている。ヒストンのァセチル化はヒストンァセチル化酵素(Histone acetyl-transferase, HAT)による酵素反応であり,現在までにヒ卜では10種類以上のHATが同定されている。MYST (Moz, Ybf2/Sas3, Sas2, Tip60)ファミリーに属するHATは他に比べ解析が遅れていたが，最近，その多彩な機能が明らかにされつつある。また，これらの機能が個体発生に必須の役割を果たすことも，ノックアウトマウスの解析等を通じて示されている。さらに，近年の複合体解析技術の進歩に伴い，MYST-HATは細胞内で単独ではなく蛋白質複合体として存在し，複合体の構成因子の構成により，HATの機能や基質特異性が変化することが明らかになりつつある。本稿ではMYST-HATに関する最近の知見を概説する。