EGFR遺伝子変異陽性患者において喫煙歴がEGFR-TKIの治療効果に及ぼす影響の検討

摘要

【背景】EGFR遺伝子変異は非喫煙者肺腺癌で陽性率が高く，肺腺癌における予後予測因子であるが，実臨床においては喫煙者でのEGFR遺伝子変異陽性症例も多数経験する．【目的】EGFR遺伝子変異陽性肺腺癌において，喫煙歴がEGFR-TKIの治療効果に及ぼす影響について検証すること．【方法】当院においてEGFR遺伝子変異陽性肺腺癌に対しEGFR-TKIを投与した60例を後ろ向きに検討し，喫煙歴により非喫煙者群33例，Brinkman Index＜400群の喫煙者8例，Brinkman Index≧400群の喫煙者19例の3群に分け，response rate，progression free survival，overall survivalを検討した．【結果】EGFR-TKIの選択はgefitinib 45例，erlotinib 11例，afatinib 4例であり，使用した治療ラインは一次治療32例，二次治療12例，三次治療以降が16例であった．EGFR-TKI治療に対するRRは非喫煙者群：83.9% 対＜400群：75% 対≧400群70.6%（p=0.51），PFS中央値は各々10.5ヶ月対6.1ヶ月対9.8ヶ月（p=0.19），OS中央値は22.9ヶ月対17.2ヶ月対15.7ヶ月（p=0.17）でいずれも喫煙者で悪い傾向にあるが，有意差は認めなかった．【結論】喫煙者においてもRR，PFS，OSは殺細胞性抗癌剤における過去の成績より良好であり，喫煙者に対するEGFR-TKI治療は妥当と考えられる．