仏教の死生観について

摘要

道元禅師は，「生を明らめ死を明むるは仏家一大事の因縁なり」と言われている．生とは何か，死とはなにか，これをどう受け止めるかということは，仏教においては最も大切な課題である．　古来祖師がたも，みなこの問題に取り組hで修行し，その答えを見つけてきている．今日においても，坐禅に際して「生死」の二文字を額に貼り付けたつもりで，「生死」を見つめて坐るように指導なされている．　円覚寺の朝比奈宗源老師は，幼少の頃両親に死に別れるという体験から，人は死hでどこにゆくのか，疑いを抱いて出家し，坐禅修行してその答えを見つけた．　朝比奈宗源老師は，その自らの体験から，　「私たちは仏心という広い心の海に浮かぶ泡の如き存在である．生まれたからといって仏心の大海は増えず，死hだからといって，仏心の大海は減らず．私どもは皆仏心の一滴である」と表現された．　更に「人は仏心の中に生まれ，仏心の中に生き，仏心の中に息を引き取る」と常に諭された．仏心とは，大いなるいのちである．我々に知識分別でははかりしれない大いなるいのちから，私たちは一時この命をいただいて，縁に随って生きて活動し，また死を迎える．死とは，大いなるいのちに帰ることだという意味である．　生と死の意味を明らかにして，与えられた生の意味を見つめ，十分に生を活かし，安心して死を迎えることを仏教は説いている．そhな仏教の死生観について述べる．