医療スタッフのケア：燃え尽きないためのセルフケアに焦点をあてて

摘要

医療スタッフ，中でもがh医療に従事するスタッフは強いストレスを経験する結果，燃え尽き症候群に陥る者の割合が高いことが示されている．燃え尽き症候群とは，一般的に「長期間にわたって他人に援助を行う過程で，こころのエネルギーが絶えず過度に要求された結果，極度の心身の疲労と感情の枯渇をきたすことを主とする症候群」とされる．燃え尽き状態にある医療者は，「仕事で心身ともにがっくり疲れていると感じる」，「患者を“物”のように扱っていると感じる」，「仕事中に起こる感情的な問題を冷静に処理できない」，「仕事にやりがいを感じることができない」といった状態を経験する．がh医療に従事するスタッフに燃え尽き症候群が多い理由として，死亡率の高さや現時点においても緩和できない多くの症状が存在すること（例：難治性の疼痛，呼吸困難，せh妄，倦怠感など），不安，抑うつ，怒りをはじめとする複雑な心理状態を有した患者や家族に対処する必要があること，意見の異なる患者と家族の仲裁役を果たさないといけないことなどが知られている．燃え尽き症候群の問題点は，患者や家族に対するケアや提供する医療が機械的?表面的となり質が低下してしまうことに加え，重度になると辞職につながったり，うつ病をはじめとした深刻なメンタルヘルス上の問題に発展してしまうことなどにある．今回のシンポジウムでは，医療スタッフのケアとして，中でも燃え尽きの予防や対策に焦点をあて，職場における工夫，セルフケアやこころの持ち方のコツに加えて，職場におけるアサーティブコミュニケーション，自身の抱えたストレス状況を改善するための問題解決スキルなどを紹介したい．