大動脈合併切除を要した左肺扁平上皮癌の一例

摘要

【背景】左上葉扁平上皮癌が大動脈浸潤が疑われた症例に対し，左肺全摘術，下行大動脈合併切除，人工血管置換術を施行した症例を報告する【対象】症例は70歳，男性．血痰を主訴に左上葉腫瘤を指摘された．当院を受診後，精査にて左肺癌が疑われた．初診時には嗄声も呈していた．左上葉に約7cm大の腫瘍を認め，腫瘤と肺門リンパ節は一塊となり，左主肺動脈，下行大動脈への浸潤が疑われた．また左鎖骨上リンパ節の腫大を認め，C-T4（Ao，嗄声）N3（左鎖骨上）M0-IIIBの診断となる．画像上，間質性肺炎を認め，放射線治療は困難であること．喀血を呈していたため，十分なインフォームドコンセントの上，手術方針とした．【手術】後側方開胸でアプローチした．腫瘍は肺門縦隔リンパ節と一塊になっており，左主気管支から気管に強固に接していたが，剥離かのうであった．しかし，大動脈弓小湾側には明らかに浸潤が認められたため，合併切除が必要であると判断．左鎖骨下動脈末梢で大動脈遮断が可能であったため，体外循環のみで心停止は行わず，右大腿動脈送血，右房脱血，脳血流は確保されたまま，下行大動脈合併切除，人工血管置換術を施行し得た．また，左主肺動脈に浸潤していたため，左肺全摘術を施行した．【術後経過】第1病日にTIAを認めるも，その後麻痺無く軽快．また乳糜胸を認め，保存的治療を施行するも軽快しないため，第10病日胸管結紮術施行．第30病日で退院となった．