標準手術への耐術能を有しないcStage IA非小細胞肺癌に対する治療：消極的縮小手術あるいは定位放射線治療?

摘要

【諸言】肺癌診療ガイドラインではcStage IAの非小細胞肺癌に対して肺葉以上の切除がグレードAの推奨術式で，縮小手術はグレードC1に規定されている．しかしながら，標準手術への耐術能を有しない場合は消極的縮小手術や定位放射線治療の対象となるが，その治療効果を比較した報告は少ない．当科で治療したcStage IAの非小細胞肺癌症例のうち，標準手術への耐術能を有しない症例における消極的縮小手術と定位放射線治療の効果を後方視的に比較し，今後の治療方針決定への足掛かりを模索した．【対象】2002年1月～2015年3月に当科で治療したcStage IAの非小細胞肺癌症例のうち，消極的縮小手術および定位放射線治療を施行した症例を対象とした．【結果】消極的縮小手術（部分切除）26例，定位放射線治療22例．以下，消極的/定位の順で示す．観察期間中央値1131.5日/645.4日（p＜0.01），平均年齢72.9歳/78.8歳（p=0.02），ECOG PS（0：1：2）5：20：1/0：17：5（p＜0.01），5年無再発生存率77.6%/46.3%（p=0.06）．治療関連合併症6例（23%）/ステロイド治療を要した放射線肺臓炎7例（32%）．【結語】消極的縮小手術においてもある程度の治療効果は期待できると考えられた．一方，患者背景や観察期間に差があるため厳密な比較は困難であるが，定位放射線治療の成績は十分とは言えない可能性がある．また，治療を要する放射線肺臓炎の併発が約3割に認めるため，その適応には十分な検討が必要と考えられた．