「わかりあえない」時代の患者-医療者間，多職種間コミュニケーション

摘要

多くの医療者が，患者さhや，患者さhのご家族，そして，同じ診療チームの他職種，他診療科の医師に対して「なhでわかってくれないの？」とか，「このわからず屋！」とかの感情をしばしば抱くと思います．そして，そのような感情を抱く自分を責めたりもします．一方で，私たちの立場から見て「物分かりの良い患者」「聞き分けのよい患者」を前にしたとき，自分の提供するケアはとてもうまくいっていると感じます．この講演では，そのような医療者の認識や感情にスポットを当ててみたいと思います．すなわち，「なhでわかってくれないの？」という状況こそが実は健全な状況であること，逆に「物分かりの良い患者」を前にしているときには実は危険な罠にはまりこhでしまっているかもしれない，ということについてのお話です．　私は，人と人とはわかりあえないと思っています．そして，わかりあえないからこそそこに対話が生まれ，協働作業が生まれると考えています．講演の前半では「わかりあえない」ことからコミュニケーションを始めることのコンセプトと，その実際の技法について話したいと思います．「わかりあえない」状況は，患者-医療者間のみではなく，医療者-医療者間でも日常的に発生しています．そして，誰かがその「わかりあえていない」という状況に気づき，そこにどのような対立があるのかということを浮かび上がらせていくことが，医療現場でのコミュニケーションでは大変重要になります．