子宮頸部腺癌由来の癌性髄膜炎：症例報告と文献的考察

摘要

癌性髄膜炎は，原発が子宮頸部由来の場合，稀な合併症と考えられている.英文の症例報告は少なく，これまで8例が報告されている.近年，その報告数は増加傾向にあり，その背景には，原疾患の生存率上昇と，癌性髄膜炎の臨床症状や診断方法が認識されるようになった点があると思われる.症例は47歳，5経妊3経産で，子宮頸部腺癌stage IIIbと診断された.様々な治療方針の中から，informed consent/choice のもと，抗癌剤による化学療法が施行された.3コース施行後，臨床所見からdown stagingが認められたことを説明し，今後の治療に関するinformed consent/choiceを経て，広汎子宮全摘術が施行され，引き続き， 術前と同じ化学療法が3コース追加された.その後，腫瘍マーカーが斬増しはじめたためにMRI， PET-CT検査を行ったが，異常所見を認めなかった.しかし，初回化学療法から10力月後，最終ィ匕学療法から6週間後に，頭痛， 不穏状態，見当識障害が出現し，緊急入院となった.入院5時間後には意識消失となった.頭部CT検査では出血や癌転移巣を示す異常所見はなかった.腰椎穿刺を施行したところ，髄膜炎所見があり，さらに顕微鏡検査で癌細胞が見つかり，原発癌と一致することから癌性髄膜炎と診断した.発症後7週間で死亡した.子宮頸部由来の癌性髄膜炎は進行癌に多く ，未だに予後不良である.しかし早期発見例では放射線全脳照射ゃ抗癌剤髄注療法で有効性を示唆する報告もある.子宮頸癌であっても癌性髄膜炎が起こる危険性を念頭に置いた管理が望まれる.