放射線誘発アポトーシスの分子機構 ミトコンドリア機能と活性酸素の役割

摘要

生体の組織の中で造血幹細胞や胸腺細胞など造血リンパ系の細胞は放射線に対する感受性が非常に高く,容易に細胞死を起こすことが古くから知られていた.それに加えて近年, Fasなど受容体を介するアポトーシス機構が成熟リンパ球などには存在することが明らかにされた.受容体を介するアポトト?シスについては,そのシグナル伝達経路や関連分子の機能解析により,アポトーシス誘導の分子機構の詳細が明らかにされてきている.一方,放射線誘発アポトーシスについては,受容体を介する経路と異なり主にDNA損傷から誘導されると考えられ,ミトコンドリア経路を必須とすることが明らかになったが,その分子機構については不明な点も多い.これら放射線誘発アポトーシスの機構の全体像については,すでに本誌特集号で詳述されているので,本稿では,最近の知見,とくにミトコンドリアと活性酸素の役割を中心に,われわれのデータを交えて概説する.