胚盤胞移植は子宮外妊娠予防につながるか？

摘要

子宮外妊娠（EP）はARTにおける重要な合併症のひとつであるが，未だにその発生を予防する有用な手段はない．近年胚盤胞移植（BT）が子宮外妊娠の発生を低下させるという報告もあり，当院でのEP例について検討したところ，EP発生率は平成10年より次第に減少しており，BT例が増加する時期と一致していた．BTがEPの発生を予防する可能性について検討する目的で，通常のD2－3移植とBTにおいてEP発生率を比較した．一方，EPの発生頻度は卵管障害例で高くなることが知られており，卵管障害の有無によってEP発生率に差があるかどうか検討した．HlO年1月～H14年7月に当院において新鮮胚移植を施行した2，755周期を卵管障害の有無により3群に分けた．A群：両側卵管障害を認める群（319周期），B群：片側卵管障害を認める群（208周期），C群：卵管障害を認めない群（2，228周期），各群の移植周期当たりの妊娠率は，D2－3移相で，A群32．4％，B群27．1％，C群35．3％，BTではA群51．4％，B群39．6％，C群45．1％であった．D2－3移植における妊娠周期当たりのEP発生率は，A群6．3％（5/80），B群2．4％（1/42），C群1．7％（11/654）であり，A群で右意に高かった（p＜0．01）．BTでのEP例はC群で1例（0．6％）に認めるのみで，A，B群ではEPは認めなかった．しかし，今回の検討では各群ともD2－3移植と胚盤胞移植において子宮外妊娠の　 発生率には有意差は認められず，今後さらに症例を増やして検討せ行う必要があると考えられた．