CT所見による内耳奇形の分類と統計

摘要

当院において最近6年間に耳CT検査にて診断された内耳奇形の症例が126例（199耳）認められた．これらCTで認められた内耳奇形の種類と頻度そして臨床症状について報告した．CTによる内耳奇形を，Jacklerらの分類を参考にして完全内耳欠損，蝸牛奇形，前庭半規管奇形，前庭水管拡大症，蝸牛小管拡大症，内耳道狭窄に分類した．さらに前庭半規管奇形を外側半規管単独異常，半規管複合異常そして半規管欠損に細分類した．症例として一番多かったのは前庭半規管奇形の78例（122耳，61％）で，その中の外側半規管単独異常が71例（110耳，56％）と最も多かった．次に蝸牛奇形の30例（46耳，24％），前庭水管拡大症の15例（28耳，12％），内耳道狭窄の2例（2耳，2％），完全内耳欠損の1例（1耳，1％）の順であった.蝸牛小管拡大症の症例はなかった．蝸牛奇形の中に髄膜炎の既往を持つ症例が2例みられた．前庭水管拡大症の中には聴力変動の発作を繰り返す症例が多数みられた．最も多かった外側半規管単独異常は臨床上の特徴がなかった．先天性感音難聴を伴う内耳奇形の中には臨床上注意すべきものもあるため，先天性感音難聴を持つ症例には積極的に耳CTを撮る必要があると考えられた．