地域権利擁護事業サービス契約可能と判定されたが,その後保佐申請を必要としたアルツハイマー型痴呆患者の1症例

摘要

患者の知的能力と日常生活能力評価において,地域精神保健従事者と痴呆診断にかかわった医師の間で乖離を生じ,そのことが職種連携を困難にさせ,成年後見制度利用まで背こ長期期間を必要としたアルツハイマー型痴呆の男性症例を経験した。 症例は独居の高齢男性で,当初権利擁護サービスの利用が導入された。患者の痴呆の状態から成年後見制度の利用が必要と考えられたが, ①申請者の不在,②本人にかかわる地域精神保健の専門職員と痴呆の診断医師との間で患者の日常生活能力の評価および判断能力の評価上の差異の存在, ③個人情報の尊重と,保護の必要性の評価における立場の違いから成年後見利用申請まで長期間を要した。 本症例を通じ,成年後見制度の普及においては, ①本人や家族を含め,在宅介護支援センターや地域保健師などの地域精神保健にかかわる専門職が活用しやすい申請方法の確立と普及,②知的·認知障害を合併しやすい精神障害者,特に痴呆患者の申請方法の手順の明確化,③医師以外の地域精神保健にかかわる専門職が対応可能な判断能力の評価方法の確立が急務であると考えられた。