成人期広汎性発達障害の自殺企図の臨床的特徴

摘要

目的：本邦における平成23年中の自殺者の総数は30,651名で，平成10年以降 は30,000名を超え続けている。本研究の目的は，本邦における成人期広汎性発達障害 (Pervasive Developmental Disorders: PDD)の自殺企図の臨床的特徴を調査することであ る。方法：2010年4月から2011年6月の期間に自殺企図で当院救命救急センターに入院 となった18歳以上の患者421名（連続サンプル）を対象として，PDDの自殺企図の臨床 的な特徴について後方視的に調査を行った。診断はMini-International Neuropsychiatry Interviewを使用した。結果：本研究においては，421名の自殺企図患者の中でPDDは25 名（5.9%)であった。男性(P<0.001),未婚(P<0.001),独居(P=0.004)はPDD群で有意に多 く，精神科既往(P=0.010),自殺企図歴(P=0.006)は有意に少なかった。自殺企図手段は刃 物(P=0.014)，一酸化炭素中毒(P=0.011)が有意に多かった。心理.社会的要因では対人問 題(P=0.001),職業問題(P=0.013)がPDD群で有意に多かった。結論：成人期PDDの自殺 企図は重篤な手段を用いるため自殺既遂のリスクが高い可能性があり.再企図を防止する ためにはPDDを適切に診断し疾患特性を理解した上でその後の精神科治療を継続する必 要がある。今後は成人期PDDの自殺企図の臨床的特徴をさらに明確にし，その上で成人 期PDDの自殺再企図防止のための介入研究を行う必要がある。