デトネーション波の消炎および再開始過程

摘要

可燃性の予混合気中を伝ぱする燃焼波はデフラグレーション波（爆燃波）とデトネーション波（爆轟波）に大別される．デフラグレーション波は，既燃気体が発生する熱を未燃気体へ熱伝導により移動させながら伝ぱする．したがって，デフラグレーション波の伝ぱ速度は予混合気の音速に比較し著しく小さい．一方，デトネーション波が未燃気体の温度を上昇させるのは衝撃波によってなされる．すなわち，デトネーション波はその前方に衝撃波を伴い，衝撃波により未燃気体の温度を自己着火温度以上に高めながら伝ぱする．したがって，デトネーション波は未燃気体の音速を超え，常に超音速で伝ぱする．例えば，量論混合比の酸素－水素混合気（以下，酸水素と略す）を密閉した長い管内に大気圧状態で充填しておき，混合気を点火した場合に形成されるデトネーション波の伝ぱ速度は約u{sub}1＝2.84km/sに達し，デトネーション波の温度および圧力はそれぞれT{sub}2＝3,670Kおよびp{sub}2＝1.92MPaにまで急峻に増加する．したがって，安全工学上の見地からデトネーション波の発生と伝ぱおよび消炎機構に関する研究が進められてきた経緯がある．特に，可燃性気体を取扱う工場やプラント設備等においてデトネーション波が発生すれば周囲に与える影響は甚大と考えられることから，デトネーション波を消炎もしくは減衰させる方法を見出すことは安全工学上の重要課題である．