C{sub}60分子を介した室温におけるスピン依存伝導

摘要

1999年に塚越らによって多層カーボンナノチューブを介したスピン依存伝導が観測されて以来、新たな研究領域として分子スピントロニクスが脚光を浴び始めている。 分子はその小さなスピン－軌道相互作用から長いスピン散乱長·スピン緩和時間を理想的には有することから、新奇分子スピン素子の創成が期待されていることがその背景としてあげられよう。 しかしながら、その後いくつかの分子を介したスピン依存伝導現象が報告されたものの、その再現性·信頼性には未だ議論の余地が多く残されている。 この理由として挙げられるのが、(i)磁性体／分子界面における大きな接触抵抗、(ii)いわゆる"ill-defined"な界面形成、でありこれらが再現性·信頼性あるスピン依存伝導現象の観測を阻害していると考えられる。 そこで今回我々は上記2点の問題を回避し信頼性ある実験を遂行するためにC{sub}60-Coナノコンポジットを提案し、室温におけるC{sub}60を介したスピン依存伝導の観測に成功したので報告する。