ヒ素含有鉱物に由来する環境汚染と修復に関する研究の動向--特に鉱澤堆積場におけるヒ素の溶出と固定について

摘要

鉱山廃水ほ閉山後も生成し続けるので，鉱廃水処理ほ有害物が基準値を満たすまで長期間続けなければならない。 これに費やされる膨大なコストを削減するため，低コストの廃水処理法や汚濁廃水の発生防止法の開発が望まれている。 著者らの研究室でほ，酸性鉱山廃水の発生抑制に関連して，黄鉄鉱や硫ヒ鉄鉱の溶解機構の解明とその溶解抑制に関する研究を行っている。 本総説ほ，これらの研究を進める過程で収集した文献の内から主として鉱澤堆宿場におけるヒ素の溶出と固定に関するものをまとめたものであり，そのため酸性汚濁水についての現言及したが，ヒ素を高濃度に含む中性もしくはアルカり性の汚濁水も存在する。鼻た，ダム建設やトンネル掘削に伴う建設残土から発生する酸性廃水はAcid rock drainage（ARD）と呼ばれ，酸性鉱山廃水（AMD）と区別されるが，廃石の発生源が違うだけで，そこで起こっている問題ほ基本的にほ鉱山廃水の場合と同じであり，ARD中にもヒ素が含まれることがある。 海外でほ自然地質からのヒ素の溶出により多数の被害者を出す問題が起きている。 国内でもヒ素が環境基準値を満たしていない環境は少なくない叩。 鉱山廃水や鉱淳堆積場に関する研究の成果ほ，鉱山廃水の問題のみならず，建設残土や自然地質からのヒ素溶出の問題の解決にも大きく貢献することが期待されている。