ベースオイルの変遷と今後の動向：グループIIIの開発動向と今後の展望

摘要

1995年にアメリカ石油協会API(American Petroleum Institute)にて，自動車用エンジン油に使用する基油のカテゴリー分類が行われ，現在に至っている。 その中で，鉱油を原料とする最高グレードのグループIII基油は，高粘度指数，高飽和分濃度かつ低硫黄分が特徴であり，これを配合したエンジン油には，高い省燃費性およびロングドレイン性の効果が期待されている。更に，近年の世界的な地球環境に対する意識の高まりは，社会全体で省エネルギーを加速することとなった。 日本の産業界では，1999年に省エネルギー法が施行され，産業界全体でエネルギーの使用量の低減を目標としている。この要求に対して，オイルメーカーでは潤滑油の摩擦特性の向上により，省エネルギーに貢献する商品を積極的に展開している。 一例を上げると，工場において油圧機械などに使用している油圧作動油を汎用品から，グループIII基油を適用し最適添加剤処方を配合した省燃費型作動油に交換することにより，5％から10％もの高い省エネルギー効果を示すことが報告されている。一方，自動車業界においては，APIと潤滑油国際標準化認証委員会ILSAC (International Lubricants Standardization and Approval Committee)が歩調を合わせ，ガソリンエンジン油の高性能化，長寿命化を推し進めている。 そして，2004年から施行されているAPIおよびILSACが定める自動車用エンジン油の最新規格となるAPISM/GF-4では自動車用エンジンオイルの環境への影響性とロングドレイン性が強化され，更に省燃費性の要求値も高くなっている。 特に省燃費性の目標値の最も高い低粘度省燃費型エンジン油0W-20に要求される性能を満たすため，オイルメーカーは高粘度指数基油であるポリアルファオレフィン(PAO)またはグループIII基油を使用している。 PAOは高粘度指数かつ低流動点を特徴とする合成炭化水素であるが，これに対してグループIII基油は原油から得られる成分を原料として製造されPAOと同等の性能を有している。 本稿ではこのグループIII基油の製造方法，要求性能，市場展開油の性能および今後の展望について解説する。