過酷環境ロボット開発へのTRIZ活用－福島第一原子力発電所における高放射線環境下調査用ロボット「PMORPH」

摘要

一般に，過酷環境で使用するロボットに対する要求仕様のうち，必要な機能と制約条件は，両立が難しいことが多い．この様な技術的矛盾を解決する手法の1つにTRIZがある．東日本大震災で損傷を受けた福島第一原子力発電所（1F）向けの調査に用いるために開発した形状変化型ロボット「PMORPH（ピーモルフ）」を例に挙げて，TRIZ の活用について説明する．調査対象である原子炉格納容器（Primary Containment Vessel；PCV）の内部は，高放射線環境であるため，調査装置を投入する際には，放射線の飛散防止のために細い配管内を通過させ，調査を実施する際には，凹凸のある平面を安定走行する必要がある．すなわち，単一形状では成立しないという技術的矛盾がある．それに対し，TRIZ活用によりPMORPH では，配管内を通過する時は「I型」形状，グレーチング上を走行する時は「コ型」形状として安定走行を確保した．また，PMORPHは，走行や形状変化をさせる駆動機構の制御に用いる電子機器を搭載していない．これは，高放射線環境下で駆動機構を動作させるために，放射線耐性が低い電子基板を使用しなければならないという技術的矛盾を解決するために考案した構成であり，それにより放射線耐性を向上している．