ハイブリッド手法による筋電義手の手指制御

摘要

本研究の目的は，筋電義手における5指屈曲-伸展動作の角度制御である.日本の上肢切断者はおよそ80000人にのぼる.そこで，上肢切断者の日常生活に必要な動作を実現する義手の研究開発が進められている.義手は能動義手，装飾義手，筋電義手の3種類に分けられる.能動義手は手先具を変えることで，さまざまなシチュエーションに合わせて使用することができる.一方，装飾義手は健常者に近い外観をしている.しかし，能動義手，装飾義手は目的に合わせて，手先具や義手そのものを変える必要がある.そこで，外観と機能を考慮し，手指の動作が可能な筋電義手が注目されている.筋電義手は，内臓バッテリーから電力を供給し手先具のモータを駆動させることで，手指の動作を実現する義手である.2017年現在販売されている筋電義手の手先具の多くは，ハンド型である.これら手先具のモータは，筋電信号により制御される.筋電信号とは，人の動作において筋肉が収縮する際に，脳から神経を伝って筋肉へ届く電気信号である.筋電信号は，上肢の切断された部位周囲に存在する残存筋からも発生する.そのため，上肢切断者による筋電義手の操作が可能である.Gachieらによって，上腕切断手術時にfree fillet flapを用いて骨接合をすることで，腕や爪の機能が復活していることが報告されている.また，岩田らは橈骨，尺骨の開放性骨折と手指の不全断裂が認められた左上肢切断者に対してfree fillet flap移植を施行した.術後10ヶ月の肩関節可動域が屈曲80度，外転75度となり，肩関節機能が温存されていることが確認されている.そのほかにも，左橈骨遠位端骨折を受傷した結果左母指が屈曲不能となった患者に対し，環指FDS腱をFPLの末節骨付着部に移植する手術を施した.術後は母指の屈曲は有効であり，ADLに支障なく回復していることが報告されているこれらの手術法を用いることで，上肢切断者は切断前の筋肉や腱から，意図した動作を筋電義手で実現可能であると考えられる.