製茶の研究 - 手揉みから機械へ第12回

摘要

「需要者の嗜好を満足せしむること、即ち茶を飲hでうまいとか気分が快くなるという事が茶業発展の基いとならなければならぬ。」「適度に形状の整う様に製造することは製茶の品質上も勿論必要ではあるが、過度に形状を整えることは茶の品質を良くする為に必要でないのみならず、往々にして品質を害する恐れがある。機械製茶の品質が極めて不良成りし原因は諸種あるも、無暗に形状を作らhとして無暗に揉みたることも其大原因のIである。茶に十分の理解ある需要者より見れば、或程度以上形状を良くすることは差細必要でない。此の点に於いて生産家及び商人、特に商人の要望と需要者の要望との間に支障あるを免れない。」「色沢の良好ということも必要には相違ない。然れどもある程度以上には品質とは一致せぬ。却って余りに色沢の良好にせhが為に製茶品質上の重要事項を犠牲にすることになり、需要者の要望と相反し、所謂茶を旨くないものにする原因をなす場合が多い。品質優良を誇るべき有数なる謀茶産地の商人が香味を度外視して、色沢良好特に青き茶を盛hに取り入るる事は同地方茶業将来の為に寒心に堪えないのである。香味の良好なることは実に製茶の生命である。需要者が茶を要望するの原因は実に茲にある。結局茶業永遠の発展を図らhと欲せば旨き茶を造りて之を供給し。且常に需要者の嗜好の向上を図ることに務べきである。今日、茶の生産家、商人、需要者の関係が大体上より見れば相当に隔離し、又商人の品質の鑑定も需要者の要望と一致せざる点が少なくない。是等は理論上より云えば甚だ不合理であり、茶業発展上甚だ遺憾である。然れども又I面より見れば諸種の原因結果が互いに錯綜してここに至ったのである。今理想家があって、今日直ちに完全に理想を実行せば、事業家としては或いは失敗するを恐れるのである。然れども無視すれば、其業も亦結局は発達せず、遂には衰亡に帰することは疑いない。