見直したい!! 各地に残る多様な「晚茶」(1)

摘要

茶の新たな需要を掘り起こそうと、各地で紅茶や烏龍茶などの発酵や萎凋した茶の生産がなされています。緑茶の不振という状況にあって茶生産の多様化が進みつつありますが、日本には今日の茶とは全く違う茶があつたということをご存知でしょうか。 例えば、江戸末期の農学者大蔵永常の『公益国産考』には、茶を刈って水で洗い、木葉ともに三寸くらいに切断、大鍋に入れて炒るという製法が紹介されています。このような今日とは異なる製法で作られる茶が、主に西日本を中心とした各地域で作られており、それは「晚茶」と呼ばれていました。昭和初期に農林省茶業試験場で製茶研究に携わった桑原次郎右衛門氏は、日本各地に四〇-五〇種類の晚茶があり、大別しても一五-六種類があつたと報告しています。