神通川の神三ダム直下における淵で越夏したサクラマスの遊泳水深

摘要

神通川の神三ダム下流の淵（最大水深は13.7m)で， サクラマスが盛夏から産卵期に遊泳していた水深を電 波発信器とァ一力ィバルタグの装着によつて2009年に 調べた。淵の表層から底層にかけてサクラマスの生存 には十分な溶存酸素があり，濁りも適当であった。底 層では表層より1.1-l.4°C低い水温が得られるにもか かわらず，サクラマスは既報のように底層に静穏に滞 留しているのではなく，日中にはlm前後の表層付近 (流速は0.35 m/s以下）を，夜間には2-4mの中層 付近を遊泳した。また，昼夜の別なく時々最深部（最 大13.6m)に潜ることがあった。産卵期が近づくと， サクラマスの遊泳水深は盛夏よりも浅くなつた。サク ラマスは，越夏に際して，流速，水温，溶存酸素およ び濁りが生息可能な範囲内であれば，底層よりも表層 の遊泳を好む可能性が示唆された。