東部瀬戸内海における栄養塩の動態とノリ養殖等のための栄養塩管理

摘要

瀬戸内海においては，高度経済成長期に富栄養化による赤潮の頻発や貧酸素水塊の発生が問題となった.1973年に 瀬戸内海環境保全臨時措置法が施行されて以降は，総量規 制等の環境政策により水質は改善されてきたが，その一方 で近年は貧栄養化が指摘されており，栄養塩不足が原因で ノリの色落ちが頻繁に発生しノリ養殖に打撃を与えている (Yamamoto,2003;多田ほか，2010;反田,原田，2012).さ らに，ワカメ養殖においても色落ちが問題となっている. 栄養塩不足の原因については多くの要因が重なっていると 考えられ，陸域からの負荷量の減少，外洋からの栄養塩供 給量の低下，大型珪藻による消費などによる栄養塩環境へ の影響が指摘されている.ノリ,ワカメ等の藻類養殖は. 沿岸,内湾生態系における物質循環の一部を活用した産業 であることから，その持続的な発展のためには，養殖場お よびその周辺海域における栄養塩等の動態を定量的に明ら かにした上で，有効かつ適切な栄養塩の管理手法を開発-提言することが必要である.この目的のため，我々は低次 生態系モデルを用いて各海域における栄養塩収支を明らか にした.さらに.陸域負荷量の変化がノリ漁期の栄養塩環 境に及ぼす影響を試算した.