日本の獣医系大学における疫学教育の現状

摘要

1997年に獣医疫学会が産声を挙げてから，本学会がま ず取り組hできたことは.獣医学とその関連領域における (獣医）疫学の発展と普及を目的とした啓蒙活動であった。 特に，発足当時，獣医系大学で（獣医）疫学の講義を独立 した科目として行なっていた大学はわずかに3大学しかな く，獣医学教育の中で疫学という科目を独立の科目として 認知してもらうことが最も重要な活動の一つであった。も ちろh，当時も獣医学教育の中で疫学の教育は行なわれて いなかった訳でなく，公衆衛生学，獣医衛生学および獣医 伝染病学といった応用獣医学分野などの講義の中で，疫学 はこれらの学問を支える方法論として位置づけられ，教育 は行われてきた。しかし.応用獣医学に関する教育の中で は，それぞれの科目で必要な疫学の内容が断片的に取り出 された形で教育が行われてきたため，疫学教育としては十 分に体系づけられておらず，応用獣医学分野以外の分野， たとえば臨床疫学などの疫学はほとhど教育されることは なかった。このような背景のもと，本学会では，（獣医） 疫学を獣医学教育の中で認知してもらうため，まず，2005 年に学会の総力を結集して,獣医疫学の教科書"獣医疫学" を出版し，（獣医）疫学を体系的にまとめるとともに，大 学教育の中で疫学を教える際の入門書として活用してもらえるよう啓蒙活動を行なった。さらに，2007年には（獣医) 疫学教育のモデルとなるカリキュラムを本学会が提言し た。2011年には，全国大学獣医学関係代表者協議会が中 心となって，獣医学生が卒業までに身につけるべき最低限 の修得内容を示した，"獣医学教育モデル.コア'カリキュ ラム"が策定され，これまでの努力が実を結び，この中で 疫学が獣医学教育の中で応用獣医学教育分野（8科目）の 中で独立した1科目として選定された。これに伴い，獣医 疫学会では，2011年に他教科に先駆けて獣医学分野では 初めてコア、カリキュラム準拠の教科書"獣医疫学一基礎 から応用まで一第2版"を出版した。その後，2016年に 始まつた獣医学共用試験(vetCBT 、 vetOSCE)のvetCBT においても，（獣医）疫学はその出題科目の1つとなって いる。