安心、安全な伝統食品フグ肝復活への道一囲い養殖法により生産される無毒トラフグの肝の利用

摘要

大変美味なフグ肝は背から庶民に好まれた伝統食品であったが，天然の肝は一般的に毒性が高く，死を招くことが多く，年間の中毒死実数の首位を長く占めている。 そのため厚生省は1983年12月2日の「フグの衛生確保について」の環境衛生局長通知1）で，右毒種も無毒種もすべてのフグ肝を食用に供することを禁止した。 10数年前から，天然トラフグの資源が乱獲などで激減したことにより，代わって養殖が盛hとなり，現在では市場に入るトラフグの8割が養殖されたものとなった。 筆者の一人は，40年にわたるフグ毒研究に従事し，フグ毒はフグだけがもつのでなく，その分布はハゼの一種ツムギハゼ，巻貝類，ヒトデなどにも広がっており，また毒ぽフグ自身が作るのではなく，フグが食べる餌に含まれるフグ毒から来ることを明らかにした。 この成果から，フグ養殖では，フグ毒をもつ生物を囲い網で遮断して，人工の管理下で無毒の餌で飼育すれば，トラフグは毒化しないことが予測された。