水産物における国際商材化の方向と展開

摘要

水産物の国際商材化の動きは1990年代以降，急速に 進hでいる。水産物の消費の伸びも，欧米諸国に始ま り，近年では中国をはじめ南米や東南アジアなどいわゆ る新興国において顕著である。また，このような水産物 を世界中に流通させるための加工機能の集積が中国の大 連やタイのバンコクなどに集約され，水産物の国際商材 化をより効率的に進めるための加工と流通のネットヮー クが着々と形成され高度化してきた。その一方，資源管 理ゃ環境へ配慮した漁業生産のあり方や，地域に根ざし た利用や文化の見直しなど，水産業が求められる役割も より多様になってきている。いまや水産物をビジネス商 材としてマネジメントの効率性でのみ評価することに同 意するものは多くはないだろう。しかし，このような "求められる役割"を水産加工業としてむしろ積極的に 整理，分類することにより，技術や開発がより社会の ニーズに即したものになるのではないかという期待もあ る。水産加工業はいうまでもなく技術と高度なマネジメント評価が不可欠であるが，一時目先を変えて"あり方 という概念整理を考えることも有益である。