魚類の卵形成に関与する卵黄前駆物質 およびその受容体に関する研究

摘要

魚卵の主要な構成成分は蛋白質や中性脂質（油球）で あり，これらは総じて卵黄と呼ばれる。卵黄は発生過程 における主要なアミノ酸源、エネルギー源であるほか， 生体膜ゃステロイドホルモン等の主原料として卵に蓄積 されている。従って，卵黄前駆物質の合成から蓄積まで を含む卵黄の形成過程は，後に胚ゃ稚仔魚の生命活動に 大きく影響すると考えられる。このため，同過程やその 制御機構に関する基礎研究は古くから行われてきた。近 年，当該分野における基礎研究は大きな発展を遂げ，そ の結果として魚類の卵形成は，従来提唱されてきたモデ ルょりも遥かに複雑な過程を経て進行し完了することが 明らかとなってきた。本稿では，魚類の卵形成過程にお いて，特に循環系に存在する卵黄前駆物質群とこれらに 由来する卵黄成分の取り込み、蓄積、分解機構につい て，これまで著者および共同研究者らにより得られた知 見を中心に紹介したい。また，卵黄前駆物質群の取り込 みに重要な役割を果たす受容体群に関しても，著者らの 研究成果を中心に紹介する。尚，本稿では魚類の「卵黄」 を広義において「卵黄球を構成する卵黄蛋白質」と「油 球を構成する中性脂質」から構成されるものとし，それ ぞれの構築機構について紹介する。