特集のおわりに

摘要

生態学だけでなく科学と技術の諸分野において、数学の重要性は近年再認識されており、例えば、米国では、諸分野の発展を支える基盤である数学に大きな投資が始まっている（Tondeur 2001；CoIwell 2002）。 近年の生態学研究では、生物の自然史を記載するだけにとどまる研究は少なくなり（膨大な数の未記載種が存在する事実とは裏腹に）、自然史の量的側面や生物の数、分布といった量の変化の研究が支配的となっている状況は、生態学関連雑誌の目次を見ても明らかである。 言葉による説明が十分に機能した質的側面の研究に対して、量的側面の研究では、言葉による説明だけでは不十分で、数学を用いた説明が必要となることがしばしばある。 そのため、量的側面が中心課題となった生態学の発展には、その基盤として数学が欠かせない。 にも関わらず、多くの生態学者にとって実際の現象を数学を用いて説明するアプローチは未だ標準ではなく、実証研究と理論研究を組み合わせることの価値は、真追蛙理解されていないのかもしれない。 ここでは、データを説明することを動機とした数理モデルの構築に際して、いくつかの主な技術的注意点を紹介したい。 より包括的で体系だった内容については、Hilbom and Mangel（1997），Burnham and Anderson（2002），Turcbin（2003）ほかを参照していただきたい。