種雄牛が有する繁殖能力の把握に向けて： 精子の受精能力を多面的に評価するための新しレ、視点

摘要

近年、多くの欧米諸国で乳用牛の受胎率低下が顕著である。アイルランドからの報告では、1980 年に5596であった乳用牛の分娩率が2006年には 40%に低下している。わが国の場合でも、1989 年に63 %であった乳用牛の人工授精における初 回受胎率が、2007年では48%までに低下してい る21。人工授精の受胎率低下には、原則として、 雄雌双方の要因が関与している3)。そこで、牛人 ェ授精の受胎率を改善するため、雌雄両側からの 取り組みが必要である。雄側で求められる取り組 みのひとつとして、種雄牛が有する繁殖能力の把 握が重要である。そこで、本稿では、精子の受精 能力を多面的に評価するための新しい視点として、 ①精子DNA損傷、②精子クロマチンの安定性、 ③精子ミトコンドリアDNA (mtDNA)異常、(4)精子DNA メチル化異常を取り上げ、ヒト不妊患 者の精子から得られた研究成果を参照しな力ら、 その概要を解説する。