赤血球造血因子（エリスロポエチン）の新しい生理作用の発見と生合成の調節機構に関する研究

摘要

酸素は生命を維持するために必須であるので，生体は種々の手段を使って酸素不足を克服しようとする．ヒトなどのように赤血球に含まれるヘモグロビン（Hb）を利用して酸素を各組織に供給する高等動物では，低酸素状態（ハイポキシア）になると，（1）Hbのアロステリックエフェクターである赤血球内2，3－ジホスホグリンセリン酸を上昇させることによりHbと酸素の親和力を下げる，（2）呼吸運動を高める，（3）赤血球量を増大させる，（4）血管を拡張させる，（5）血管新生をひき起こすなどさまざまな手段により組織への酸素供給量を維持しようとする．また，低酸素状態にある細胞では解糖系の酵素を誘導することにより，酸素不足によるミトコンドリアのATP生産能の低下を補償しようとする．これらの中でも，赤血球量を調節することが酸素不足を解消する最も重要な手段となっている．赤血球の形成過程は，以下のような機構で調節されている．