コナラの特異的な繁殖早熟性とその生態的意味の解釈

摘要

コナラ亜属樹種の更新様式は、例えば風散布多量種子生産を行なわないことなどからも分かるように、必ずしも先駆種的ではない。 にも関わらずコナラ亜属樹種は、草地放棄地や薪炭林、天然林伐採地など、様々な人為撹乱下で更新し、二次林の最も主要な優占種となっている。 西日本のコナラ亜属の中で最も広く二次林を形成するコナラは、高木種としては繁殖早熟性を示し（橋詰1983など）、樹高2m前後の幼樹でも大量の開花結実することが観察される。 コトラのような繁殖早熟性は、一般的には頻繁な撹乱体制下で更新することに有利であると考えられている（Nakashizuka et al．，1997）。 しかし一方で、繁殖は）走の資源の投資巷伴うので、成長を競わなければならない高木種にとって、成長初期段階での繁植開始は不利であると考えることもできよう。 この報告では、コナラの繁殖早熟性に注目し、滋賀県琵琶湖西岸の志賀望山試験地と京都席伏見区において行った観察を紹介する。 そして繁殖早熟性が、撹乱下でのコナラの個体群維持にどのように寄与しているかを考える。