「キノコとキノコ食性動物の匂いコミュニケーション一特にキノコ食性ナメクジとの関係一」

摘要

キノコは様々な匂いを生産するが，その生態学的意義 は明らかにされていない.植物は匂いを利用して送粉者 や捕食者を忌避、誘引させており，同様に菌類の"花" にあたるキノコも，動物散布や被食防御に匂いを利用し ていると考えられる.しかし，ほとhどの菌類の匂い成 分や，その経時変化，またキノコの匂いと動物に対する 反応については十分に研究されていない.そこで本研究 では，キノコの匂いを用いた動物とのコミュニケーショ ンを調べることで，キノコの匂いの生態学的な機能を明 らカ、にし，菌類の胞子散布戦略の理解を深めることを目的とした.キノコの匂いの生態学的意義を明らかにする には，（1)菌食性動物の胞子散布能力，（2)広い分類群 のキノコの匂い成分に対する，菌食性動物の反応，（3) 菌食性動物が忌避、誘引反応を示す，キノコの匂い成分， の3点を調べる必要がある.そこで，本研究は菌食性動物として，ャマナメクジとショウジョゥバエに注目した. 本研究ではこれら2種を実験動物に用いることで，これ まで実験が困難だった，忌避、誘引する菌種の特定や匂 い成分の検出，さらに個々の菌類の匂い成分の菌食性動 物に対する効果について，多種の菌類間で比較することを可能にした.