共生窒素固定研究の最新情報（11）－マメ科植物との共生にかかわる根粒菌の遺伝子－

摘要

この地球上の窒素固定の担い手は原核生物に限られている。 その基本は，N_2＋16ATP＋8e-＋8H~＋→2NH_3＋16ADP＋16Pi＋H_2の反応式で示されるように，大気中の分子状窒素（N2）を還元してアンモニア（と副産物としての水素）を生成する反応である。これを触媒する酵素ニトロゲナーゼは，ジニトロゲナーゼとジニトロゲナーゼレダクターゼとの複合体であり，ジニトロゲナーゼ上にある鉄、モリブデンを含む補因子（FeMo－CO）が活性中心となっている。 窒素固定能は，グラム陰性、陽性両細菌（好気性、嫌気性両方含まれる），更には古細菌にもまたがる系統的に多様な原核生物に見いだされるが，上述のニトロゲナーゼの基本構造は多くの場合に共通である。窒素分子内のきわめて安定な三重結合（N ident to N）を切り離す（還元する）のに多量のエネルギー（ATP）が最終的に消費されること，ジニトロゲナーゼレダクターゼは酸素に触れることにより失滴するため，反応系を酸素から隔離する必要があること，といった二つの問題が窒素固定には絶えずつきまとう。 多様な窒素固定生物はそれぞれ独自の方法でこの間題を解決しているわけであるが，中でも根粒菌はマメ科植物との間で共生系を作り上げることを通じて両問題を解決し，その結果，地球上における全生物的窒素固定のうちの相当部分を支えるほどに繁栄したわけである。