日本の近代的所有権と農地改革、戦後農地所有 —土地の公共性の視点から一

摘要

農地政策を議論する政府の研究会等で農地改革 の問題が取り上げられなくなったのはいつ頃から だろう力農業基本法を見直した「新たな基本法」,食料.農業、農村基本法（1999年）が制定されたときも同 様であったようである.その際設けられた「農業基 本法に関する研究会」の座長を務めた故荏開津典生 がその経緯について貴重な報告をしている（|).荏開 津は「研究会における主要論点」として構造政策に おける「構造」の理解や基本法の法的性格等ととも に，「農地（土地）の理解」をあげている.①農業 基本法における農地ないし土地の公共性の理解の 不十分さ，②土地利用計画，土地利用区分の制度の 確立の必要性，③農業経営について借地による規模 拡大が政策の前面に出され進められている中，自作 農を最も望ましい土地利用の形態とする農地法の 思想が厳然と残っていることや，より厄介な問題と して零細多数の土地所有者の土地を集めて大規模 経営をつくつていくという，世界にあまり類をみな いやり方にならざるをえないことをどう考えるカゝ，(4)日本において大規模経営をつくつていくには新 しいアイデアにもとづく制度を考え出す必要性を 多くの委員が指摘したという.