EUにおける食品政策の展開と現状

摘要

EUは現在，現加盟国での統合の深化と東方諸国への新たな拡張という二重の意味での拡大を進めつつある．また，基盤となる条約の改正による欧州議会の権限強化など大きな変化の中にある．そのようななかで，EU市民の生命にかかわる食品安全性政策をはじめとする食品に対する政策は，重要な焦点となっている．これは，EU拡大のみならずEU市民の権限強化という新たな側面においても非常に重要な鍵となっている．このような背景を持ち，多数の加盟国の利害、関心を調整する必要があるEUにとっては，政策の基準作成や合意形成は最もシビアな問題であり，調整のために理念を明確に打ち出す必要性がある．今後の日本の食品政策のあり方を考えるうえで，このように周到に練り上げられたEUの政策体系および理念を把握することは有益であると考える．