ウマの盲腸運動評価にあけるElectrocecographyの有用性

摘要

近年ヒトにおいては，胃の平滑筋層部の電気的活動を腹壁を介して経皮的に記録するElectrogastrography（EGG）が，非侵襲的方法として応用されている。本研究においては，盲腸渠膜面に長期的に装着したStrain Gauge Force Transducer（Force Transducer）による方法と，Electrocecography（ECG）を用いた経皮的方法をキシラジン投与下で比較することにより，ウマの消化管運動の評価方法としてのECGの有用性を検討した。 供試馬はサラブレッド種6頭（雄，平均体重457．5±9．2Kg）を用いた。 その結果，キシラジン投与後，ECGの経皮的盲腸電位およびForce Transducerの盲腸収縮運動は，いずれも抑制された。投与前を100％とする両者の振幅の平均減少率はそれぞれ17．8±3．4％，20．0±4．6％であり，有意な相関が認められた（r＝0．90）。 一方，ECGのFFT解析による，パワー分布の中心は6 cycle per minute（cpm）であり，これはForce Transducerによる収縮頻度5．4±3．0回／分を反映するものと考えられた。 キシラジン投与後のECGのランニング、スペクトル、トータル、パワーにおける全周波数帯は，37．0±5．1％に低下した。 以上のことから，ECGの電位はウマの盲腸由来の電気的活動を反映しており，この方法はウマの盲腸運動を経皮的に評価するうえで，高い臨床応用性を有するものと考えられた。