ストレスが乳牛の免疫機能に及ぼす影響

摘要

ストレス」という語句は，現在の生清の場で明らかな定義なしで，漠然と広く使われている。家畜の生産現場でも輸送や暑熱，飼育環境の変化が種々の感染症や代謝病を誘発することが多くあり，この原因にこれらがストレツサーと。 して働くといわれている。 ではストレスとは一体何であろうか。 本稿ではストレスとは「個体の持つ恒常性が奪われた状態」であり，それらを引き起こす原因をストレッサーと定義したい。 ストレスという概念は，今から約70年前にカナダ人のハンス、セリエによって一般化された。 セリエは，ストレスの病態として下垂体一副腎皮質系から産生される副腎皮質刺激ホルモン（ACTH）や，副腎皮質ホルモン（GC）の作用に注目した。 近年，これらホルモンや，ACTHの上位にあるCRH（corticotroi）in-releasing hormone）が末梢神経や，マクロファージ，リンパ球といった免疫系細胞からも産生されること，また従来，免疫系細胞からたけ産生されると考えられていたサイトカインが，脳などの神経系細胞からも産生されていることが明らかこなった。 さらに，神経系がこれらホルモンやサイトカインの産生や抑制に深く関与していることが明らかになり，生体の恒常性が神経。 内分泌と免疫系との“相互対話”で維持されていることが明らかこなつてきた（図-1）。 ストレスとはこれら相互対話で維持されている恒常性が奪われた状態であり，ストレッサー（心理的、社会的，あるいは生理的、病理的）は神経、内分泌、免疫に種々の影響を及ぼす。 しかし，家畜での研究は，残念ながらほとhど進hでいない。