ル一メン細菌最から芩える ルーメンアシドーシス

摘要

ゥシのルーメンは消化器官の一部で，組織学的には 食道の一部が拡張したものである。付属する消化腺は ないが，その内腔には多種多様な微生物が生息し，主 に嫌気的な発酵で飼料を分解している。ルーメンはゥ シ体内で最大の器官であり，体内代謝を主に栄養的な 面から支えている。体内の諸器官の場合，栄養や酸素 は血液で運ばれ，異化や同化で生じた代謝産物は血液 により除去され,器官としての恒常性を維持している。 ルーメンの場合，代謝（ルーメン発酵）に必要な栄養は 口から食道を通ってルーメンへ入り，その代謝産物は 下部消化管へと送られたり，ルーメン壁から吸収されたりするカ气温度，pH,浸透圧などの物理化学的性状 は一定の範囲に保たれ，ルーメンとしての恒常性が維 持されている。したがって，ルーメンの恒常性が維持 されることでルーメン内での飼料分解は適正に進行 し，栄養分(発酵産物）を効率的に牛に供給できる。し かし，ルーメンの恒常性が保てない場合，特に易発酵 性飼料(濃厚飼料など）を多給した場合に起こるルー メンアシドーシスでは，採食量の低下，下痢，肝膿瘍 などを起こし，経済的損耗が大きいことからその予防 が求められている。本稿では，ルーメンアシドーシス が起きるメカニズムをルーメンの恒常性とルーメン細菌叢の観点から概説する。