くすりを使いこなす5： くすりが分布する場所を 考える-分布容積(Vd)-

摘要

「そのくすりがどこに分布するのか？」ということ はくすりを動物に投与する者として知っているのが当 たり前である。例えば.輸液剤で考えてみょう。血液， 新鮮凍結血漿.デキストラン，ヘスエキスパンダ一な どは，投与した全量が血管内にとどまるため「血液増 量剤」という。また，生理食塩液，リンゲル液.乳酸 リンゲル液や酢酸リンゲル液はナトリウム濃度が細胞 外液にほぼ等しいために細胞外液.すなわち血管内と 組織内にのみ分布することから，「細胞外液補充剤」と呼称される。一方，5%ブドウ糖液はナトリウムを含 まないために血管から細胞内まですべての体液区画に 拡散することから，「細胞内液補充剤」に分類されてい る。すなわち，輸液剤は血管内，細胞外液区画，さら には細胞内液区画まで，その成分によって分布する領 域が異なり，血液量減少，脱水，または体液維持など 目的に応じて使い分けが重要となる。