誘導換羽実施中の採卵鶏におけるSalmonella enteritidis感染の進行に対する異なるSalmonell血清型による前感染の影響

摘要

絶食により誘導換羽させた採卵鶏においてS．typhimurium ，S．muenchenによる前感染がS．enteritidisの攻撃による病原性や伝播を変化させるかどうかを評価するために，4回の実験を石った。 採卵鶏は2群に分け，一方の荊にはS．typhimuriumまたはS．muenherの前感染を行い，他力の群にほS．enteritidisによる攻撃を行うまで無処置のままにした。 実験1および2では絶食5日前に採卵鶏にS．typhimuriumを接種し，絶食4日後に両群の採卵鶏をS．enteritidisで攻撃した。実験3および4ではそれぞれS．typhimuriumまたはS．muenchenを雑食1日後に接種した。 S．enteritidis伝播の評価は，絶食4日後にケージ1列当たり11羽のうしちの中央の鶏をS．nteritidisで攻撃し，その後，S．enteritidis感染の進行を追跡することにより行った。 実験1と2において，鶏は絶食5日前にS．typhimuriumの接種を受けたが，S．enteritidis攻撃による排菌は換羽処理のみを行った鶏と比較して実験1では攻撃10日後で，実験2では攻撃3日と10日で着意に減少した。 実験2においてS．typhimuriumを接種した鶏から回収されたS．enteritidisの顕著な減少は攻撃9日で肝臓と牌臓でみられた。 実験3では絶食1日後にS．typhimuriumを接種した鶏においてS．enteritidisの伝播は3日，10日，24日で有意に減少した。 実験4ではS．typhimuriumよりもむしろS．enteritidisと抗原交差反応を全く欠ぐサルモネラであるS．muenchen（O6，8：Jd：1，2［z_(67)）を接種したことを除いては実験3と方法的に似ており，S．enteiritdisの伝播は攻撃後3，10，17，24日に有意に低下し，S．enteritidis感染に対してみられた抵抗性は特異的免疫以外であることを示している。 こうした結果ほ鶏群にS．enteiritidisではないパラチフス性サルモネラを前感染させることにより，換羽中に発生するかもしれないS．enteiritidisによる問題を減らせることを示唆している。 確かに，鶏のサルモネラ感染において，ある血清型に感染すれば，その後のほかの血清型による感染が軽減されることは報告されている。しかし，二重に感染することは矧ことっても健全ではなく，感染した血清型が2種類になるので推奨できる話ではない。 なお，このことに関して著者ら（HoltとGast）は考察で，いろいろ問題があり，それらを無視できないが，対象が重要なS．enfeiritidisの場合なので考える必要があると述べている。また，最近では米国において3種頬のS．typhimurium弱毒化ワクチン（ブロイラー用）の使用が認可されたが，これに関しても，これらは本システムにおいて試験される最初の論理的な候補（ほかの血清型）であろうとも考察で述べている。 筆者としては，このように現行のブロイラー用生ワクチンと結び付けると一面では同意できるので，いずれにしても，今後への提言と考えるべきであろう。 なお，著者らは述語として，強制換羽（forced molt ）の代わりに誘導換羽（induced molt）を用いている。 “強制換羽”では，動物福祉上響きが悪く，自然界でも起こっている換羽を誘導させることから∴‘誘導換羽”と呼称することは妥当と考える。 “誘導換羽”がわが国でも普及することを望む。