黒毛和種牛に発生したエンドファイト中毒とその病理学的所見

摘要

アメリカ産ベレニアルライグラスストローを給与していた3農場で，神経症状を示す黒毛和種牛4頭に遭遇した。 給与飼料，血液生化学的検査，病理学的検査結果からエンドファイトによる中毒症であることが示唆され，4症例について詳細に検討を行った。 農場で給与していたペレニアルライグラスストローからエンドファイト菌糸が確認され，エンドファイトトキシンであるエルゴバリン（54 ppb～140 ppb），ロリトレムB（690 ppb～1530 ppb）が検出された。また病性鑑定を実施した症例の腎臓周囲脂肪組織中よりロリトレムB（105 ng／g）を検出した。病理学的検査において小脳プルキンエ細胞の融解，脱落，空胞変性，大脳のグリア細胞の集束化と血管周囲の微小出血，脊髄，延髄の神経細胞の脱落と変性，小腸粘膜下織小動脈壁の変性とフィブリノイド壊死が観察された。