細菌，ウイルス等の遺伝子診断の利用価値

摘要

西暦2000年の日本の畜産界における最大の出来事は，92年ぶりの口蹄疫の発生と，これを約6ケ月という短期間に清浄化できたことであろう。これは，我が国の獣医，畜産関係者が一致団結した成果であり，日本の獣医診療技術水準の高さを世界に誇ることのできる偉業と言える。 今回の口蹄疫は，臨床症状からも疫学的所見からも，これまで知られていた口蹄疫とは異なる様相を呈していた。 従つて，当初，「疑似患畜」は，抗体陽性にも拘わらずウイルスが検出できなかったため，その診断にはこれまで以上の慎重さが求められた。 結局，最初に実施した遺伝子検査（PCR法）で検出された遺伝子の塩基配列が口蹄疫ウイルスのものと一致したことから，これを「口蹄疫ウイルスを分離したと同等の評価をすべき結果」と位置づけられ，我が国での口蹄疫発生が確定した。 その後，新たに見出された患畜からウイルスも分離され，その診断結果が正しいことが証明された。