獲得吸汁時間に応じたTomato yellow leaf curl virus成虫保毒率とトマトへの媒介率の増加に関するタバココナジラミバイオタイプB，Q問の比較

摘要

トマト黄化葉巻病は日本では1996年に発生が初確認されたTomato yellow leaf curl virus（TYLCV）によって引き起こされるトマトのウイルス病で関東以西のトマト栽培において甚大な被害を与えている。トマト黄化葉巻病は圃場ではタバココナジラミBemisia tabaci（Gennadius）によってのみ媒介される。タバココナジラミは多くのバイオタイプからなる種複合（Species Complex）であるとされているが，日本での媒介の中心はタバココナジラミバイオタイプBであった。このため本ウイルス病の防除はバイオタイプBを対象に行われ，発生地域ではネオニコテノイド剤などのバイオタイプBに卓効の殺虫剤が多用される傾向にあった。ところが，本ウイルスを媒介する能力を持ち，しかも多くのネオニコチノイド剤等に抵抗性を有するバイオタイプQの発生が2004年に広島県，熊本県，宮崎県および鹿児島県で確認された。その後，バイオタイプQは全国に分布を拡大し，2008年8月現在，38都府県で発生が確認されており，現在では本病の媒介の主体はバイオタイプQに移りつつある。このバイオタイプの置き換わりがトマト黄化葉巻病の発生にどのように影響するかを明らかにするために，バイオタイプBとQのTYLCV獲得吸汁時間とウイルス獲得率および健全トマトに対する接種吸汁による感染率の関係を調査し，バイオタイプ間におけるTYLCVの媒介能力の違いを検証した。