油蚕とブゴマダラチョウイラ

摘要

鱗翅目昆虫の幼虫は，個々の生息環境に適応し，独自 の模様や色（体色）を有している。緑色の幼虫が多いの は，食樹の生葉を摂食する時に，外敵から目立ちにくい ことと関係があるだろう。ゴマダラチョウやォォムラサ キの若齢幼虫のように，緑ではなく，食樹の樹皮にそつ くりな体色を示す種もいる。カイコの祖先種と考えられ ているクヮコの幼虫体色は暗褐色である。野外では，ク ヮコが枝に擬態するかのような姿勢で静止する様をしば しば目撃するので，枝に同化するように進化してきたの かもしれない。カイコには，通常のカイコとは似ても似 つかないような模様、体色を有する突然変異が多数知ら れており，それらの大部分は，1遺伝子の突然変異に支配されている（伴野ら，2005)。これは，鱗翅目昆虫の 幼虫の模様、体色は，少数の遺伝子の突然変異によって も大きく変化しうることを示している。カイコは，鱗翅目昆虫の幼虫の模様、体色が発現するメカニズムを理解 する上で，非常に有用なモデルである。