葉緑体から核への直接的なH_2O_2シグナル輸送

摘要

光合成は光エネルギーと水とを利用してCO_2を固定 する反応であり，地球上の生命活動を支える極めて重 要な代謝である.しかし.CO_2固定速度を上回るレべ ルの光(強光)に曝されると,電子伝達系で余剰電子が 生じ,酸素と反応することによって活性酸素種(ROS) が生じる .強光下でのROS生成や酸化降害を防ぐた めに.植物はさまざまなシステムを進化過程で獲得し てきた.そのうちの一つは.アスコルビン酸ペルオキ シダーゼ（APX)の獲得である高等植物では，細胞質 (cAPX)や葉緑体（ストロマ型 sAPXおよびチラコイド 膜結合型tAPX)を含む種々のコンパートメントにアイ ソフォームが配置されている.それらの中で，葉緑 体型APXは興味深い特徴をもっており，それはH_2O_2 に対する高い感受性である.この特徴は高濃度のアス コルビン酸存在下では緩和されるが，それでも強光ス トレス下では葉緑体型APXの失活が生じる.葉緑体 におけるH_2O_2消去能を向上させた形質転換植物高 いストレス耐性能をボすことから，葉緑体型APXは 光酸化的ストレス耐性の律速酵素であると長らく 信じ られていた.