ビタミンK研究一医学生物学における新たな展開

摘要

ビタミンKは，血液凝固因子（coagulants：第Ⅱ，Ⅶ，Ⅸ，　 Ⅹ因子）の活性化に必要などタミンとして発見されたが，　 その後，抗血液凝固因子（anti－coagulants：proteinC，S，Z）　 の活性化にも関与することが明らかとなり，ビタミンK　 はその主な機能であるγ－グルタミルカルポキシル化反応を介して血液凝固系で重要な役割を果たすことが明らかとなってきた．また，一方，BoucbkaertらによるビタミンKの骨折治癒促進作用の発見1）を契機に，ビタミンKが骨組織や血管内皮細胞における石灰化反応に深く関与していることが明らかとなり，これらの組織でビタミンK依存性タンパク質であるオステオカルシン（osteocalcin: OC）マトリックスグラタンバク質（MatrixGlaProtein：MGP），プロテインSの発見に繋がっている．興味あることに，骨組織で発現するOCは骨石灰化反応に促進的に働き，血管内皮細胞で発現するMGpは動脈石灰化反応に対して抑制的に働く．この現象は，血液凝固系におけるcoagulantsとanti－coagulantsに対するビタミンKの活性化反応に類似しており，生体内でのどタミンKを介する巧妙な調節システムの存在が伺われる．また，最近，ビタミンKはγ－グルタミルカルポキシル化反応とは別に，標的細胞の核内受容体（SXR/PXR）と結合し2）3），転写因子（Msx_2）の遺伝子発現を制御することが明らかになってきている4）．これらの発見は，正常細胞のみならずがh細胞に対する増殖制御，転移浸潤阻止，アポトーシス誘導などのどタミンKの新たな作用メカニズムの解明とどタミンK分子をリード化合物とする創薬研究に大いに貢献するものと期待される．