冷害のリスク対応営農計画支援システム－リスク、マネジメント、アプローチ－

摘要

水稲冷害に関しては膨大な研究成果があるが、冷害対策の意思決定文技という視点からの研究はほとhど見られない。 そこで本報告では、主に水稲作経営を対象として、リスク、マネジメントの観点から冷害リスク対応営農支援システムについて考察を行う。 想定される損害規模によって、それぞれの対策技術の有効性も異なってくるため、冷害対策を効果的に行うためには、冷害を発生頻度と損害規模の2要関の組合わせにょって測定することが、リスク、マネジメントの第一歩となる。 水稲減収に対する予防的手段のうち防止の手段としては、基盤整備、地力対策、耐冷性品種の導入、深水管理、病虫害防除などがある。農家所得の維持など経営的な視点からのリスク処理手段としては、品種分散や複合経営などがある。実際の経営対応では、ヤマセ被害の大きな影響を受けやすい地域では園芸作物の導入などにより複合経営を進めているのに対し、影響を比較的受けにくい地域では技術的対応により冷害に強い水稲作経営を目指しており、損害の規模や頻度により実際の経営対応が異なっていることを示している。 営農計画上からみた冷害リスク対策としては、冷害抵抗性品種、作期、苗種、栽培方法の最適組合せを具体的に求めることが重要と思われるが、これには確率的計画法が利用できる。 確率的計画法は、リスクの把握や回避の考え方によって、最低収益最大化基準や期待効用最大化基準など多様なアプローチがある。 適用に際しては、冷害に伴う収量変動を離散型確率分布と仮定した最低収益最大化基準によるアプローチが有効と思われ、これらの手法を適用するためのシステムも開発されている。 確率的計画法の適用に必要となる長期間の収量変動データを栽培試験から得ることは困難であるため、作物モデルを用いて気象データから品種、作期、甫種毎の収量変動を推定することに期待がかかる。