B型肝炎ウィルス感染による肝細胞傷害の機序 -HBV遺伝子型と病原性-

摘要

B型肝炎ウィルス（HBV)はB型肝炎の原因ウィルスである力s'，無症候性キャリア力s、存在すること から，ウィルスの直接的な細胞傷害性はないと広く考えられていた.一方で，生体肝移植後の免疫抑 制時におけるB型肝炎ゃヒト免疫不全ウィルス（HIV)との共感染例においてHBV増殖及び肝線維 化が急速に進展するという報告がなされ，HBVによる直接的な肝傷害性が示唆されている.また， HBVには遺伝子型や特異的な変異が存在し，病態形成に関与していることが報告されている.我々 は，HBV遺伝子型に対応した複製クローンを作成し，in vitro細胞培養系で遺伝子型によるウィルス 複製や蛋白産生能の違いを示している.さらに，近年樹立されたヒト肝臓を持つヒト肝細胞置換免疫 不全マウス（キメラマウス）を用いて，各HBV遺伝子型の感染実験を行い，そのウィルス学的な特 徴及び病原性の違いを明らかにしたので，概説する.